天空の階段   レストラン ヴィナス

 

 

 

 翌日、約束の時間に、例のデイスコの前で待ち合わせる。

「はーい、智奈さん、お待たせ。」

「あのー。」

智奈は璃紗だけがそこにいることに少し戸惑う。

「あ、夜魔根は今日は用事。なにやらパソコンたたいてるわ。時々そうなの。気に

しないでね。一緒に行けないのを残念がってたわ。さあ、行きましょうか。」

「レストラン・ヴィナス」奇妙な札が掛かっている。

{ 大胆な女性大歓迎。あなたの気持ち次第で無料で食べ放題。}

二人は扉を開く。

 ボーイがにっこりと微笑む。「どうぞお入り下さい。」 

 もう一枚の扉を開く。メニューが広げて置いてある。男性用と女性用が別々だ。

男性用にはバイキグメニューの金額が記入されているが、女性用には料金は書

いてない。

 最後の扉を開く。明るい店内では、男性は普通の格好だが、女性は下着姿やト

ップレス。客の7割方は男性だ。

 ウエイターがやってくる。「こちらの座にお座り下さい。女性の方は無料で食べ

放題ですが、1皿ごとに、イスの上にお立ちになって大変恐縮ですが、何でも結構

ですから1枚お脱ぎ下さい。」

「悪くないわね、あなたもいいかしら。」璃紗は微笑む。

「ええ、がんばってみます。こういうことだったんですね。」二人は席に着く。

  後ろの壁には大きなタペストリーが掛かっている。ホテルの部屋にあったものと

同じ作風で、荒れ果てた古代ローマ遺跡が描かれている。地中海をバックに石柱

の列が砂漠の中にどこまでも並んでいる。

 

 早速璃紗は立ち上がる。スポットライトが点灯し、璃紗を照らす。一斉に男達の

視線が集まる。何の躊躇もなく、璃紗はミニスカートを脱ぐ。黒いスキャンテイに無

数の眼差しが突き刺さる。智奈も立ち上がり、半ズボンを脱ぐ。真紅のパンテイに、

やはり視線が集まってくる。二人はワゴンまで歩いていき料理を盛る。結構お皿

は小さい。すぐに食べてしまった璃紗は、また立ち上がって、今度はキャミソール

を脱ぐ。白い胸が、プルンと飛び出す。男達の拍手があがる。小さなスキャンテイ

1枚だけの姿で、璃紗は無数の視線を無視してワゴンまで歩く。智奈も立ち上が

り、チビTを脱ぐ。小ぶりだが綺麗な胸がぽろりと飛び出す。赤い透けたパンテイ

1枚の姿で、璃紗のあとを追う。 料理は本当に旨い。もう空だ。最後の1枚だけ

を身につけた璃紗に、容赦なくスポットが当たる。店内はシーンと静まり返り、妖

しい音楽だけが聞こえる。璃紗はじりじりとサイドリボンを下げ、突きだした白いお

尻を剥き出しにする。にやりと妖しく笑ったは、片手でそこを覆い、足を広げな

がら、リボンを解き最後の1枚をはらりと落とす。音楽は鳴り終わらず、男達の目

は、彼女の手のひらに注がれている。璃紗は、男達を見渡し微笑むと、秘密をお

おった手を静かに広げる。あるべき筈の茂みのない白い肌にそこだけ真紅のクレ

バスが剥き出しになる。

「うわー、すごい、何時の間に剃ったんですか?」

「今朝、化け猫に剃られちゃったのよ。」

「あはは、化け猫って夜魔根さんね、でも、綺麗、」

「そんなにまじまじ見ないでよ。おかしくなっちゃうじゃない。それに今度はあなた

の番よ。一人でギブアップなんて許さないから。」

「えー、マジで私も脱ぐんですか?」

「昨日はやったじゃない。」

「でもそれは、まあ。」

 急かすようにスポットが智奈を照らす。

 智奈も覚悟を決め立ち上がる。頭がくらくらする。パンテイに掛けた手が震える。

ゆっくりと下ろしていく。とても男達と目を合わせられない。後ろを向き、白いお尻

を彼らに剥き出しにする。さらにパンテイを下ろす。濃い茂みが露になり、濡れた

割れ目さえも覗く。

 場内はやんやの拍手とヤジに包まれる。璃紗は割れ目も露な姿で歩き始める。

智奈も陰毛を露出した姿で歩く。拍手とヤジをかき分け、ワゴンまでたどり着く。

 「すごいですね、良かったら近くで見せて頂けませんか?」青年が声を掛けてくる。

 璃紗は彼らの前で、イスに浅く腰を置き、身体をのけぞらせ、足を大きく開く。目

の前に、赤い割れ目が迫る。璃紗は更に花びらまでも広ろげて見せる。

「どう、よく見える?」璃紗は明るく笑う。

「それにしても璃紗さんって大胆ですねえ。」

「別に見せても減りはしないわよ、それに見られる快感って病みつきになるとこう

なってしまうのかしらね。あなたももう、同じ穴の狢じゃないこと?」

「え、そんなあ。」

 最後の1枚と交換した皿も空になる。

「ねえ、このあとどうするの?」

璃紗はウエイターに尋ねる。

「一応、あとは食べ放題です。ただ、更に皆様を楽しませて頂けた方には、特別な

プレゼントをご用意しております。」

 「おもしろそうね」

 眩しい裸身の璃紗は、再びイスの上に立ち上がる。スポットが眩しい。璃紗はウ

エイターがカウンターの上に置いてくれたイスに腰掛け、足を開く。左手で花びらを

広げ、右手で剥き出しのクリトリスを擦る。胸は大きく張り、乳首は硬くなり、割れ

目は濡れぼそり、ルビーは赤く硬く充血して輝きを増す。愛液が長い糸を引いてカ

ウンターに流れ落ち、ライトにきらきらと輝く。璃紗は無数の視線に羞恥を募らせな

がらも、更に更に激しく擦り続ける。

 「あ、あ、あ、逝くーう。」

 璃紗は衆目の中で逝ってしまう。

「さあ、今度はあなたの番よ。」

 ゆっくりとイスから降りた璃紗は、智奈をまだ璃紗の愛液で濡れたイスに無理矢

理腰掛けさせる。

「ああ、そんな。」

 璃紗は、智奈の乳首を口に含む。柔らかな舌先がつつくように乳首を愛撫する。

璃紗の綺麗な白い手は、智奈のもう片方の胸を揉む。決してオトコの手では出来

ない微妙な動きが、敏感な乳首を転がす。

「ああん、璃紗さん、ひどい・・・」

 足が勝手に開いてしまう。口も半開きになりヨダレが滴る。今まで感じたことのな

かった、痺れるような快感が智奈の体を包むように燃やしていく。

 璃紗の指は智奈の陰毛をかき分け、璃紗の舌は、クリトリスを捉える。恐ろしく

絶妙な動きの白い指は、智奈のびしょぬれのヴァギナに簡単に進入していく。

 璃紗の舌先は脈動する命を持った機械のように小刻みな愛撫を、充血したクリト

リスに与え続ける。長い何本もの指は、ヴァギナの中を優しい風のように、熱い炎

のように縦横無尽に駆けめぐる。

 「ああ、ああ、ああ、あ、あ、あ、あああああああ」

 智奈もまた快感の高みに投げ上げられ、飛翔する。

「さあ、あとは自分でなさい。」

璃紗は指先をそこから抜き、智奈の手を導く。

智奈の指先は最初はおずおずと、そして間もなく激しく動き始める。

 逝く、逝く、逝く、、、頂点は何度も訪れ、智奈は遂に果てる。

 割れるような拍手。まだ愛液をしたたらせ、ぐったりとイスにもたれかかる智奈と

ひざまずく璃紗に、ウエイターは、2本のワインを差し出す。「当店秘蔵の地中海ワ

イン ヴィナスの滴 です。希少な品ですが、あなた方のような方にこそ相応しい。

どうぞお納め下さい。」再び大きな拍手と歓声。二人は微笑みながらワインを受け

取る。

 「ねえ、お料理おいしかったわ。少し包んでくれないかしら。彼がホテルで待って

るの。」

ようやくキャミソールだけ着た璃紗はウエイターに告げる。

 「おやすいご用です。暫くお待ち下さい。」ウエイターは意外に大きな包みを下げ

て戻ってくる。

 

 ワインと料理を抱え、智奈と共に璃紗はホテルに戻る。

「ただいま!!」

「あ、お帰り、智奈さんも一緒なんだ。で、どうだった?食事は楽しかった?」

「ええ、もう最高! これおみやげよ。」

「うわー遂に手に入れたね、ヴィナスの滴、あ、二本も。ということは、智奈さんも 

スペシャル やったんだね。見たかったなあ。」

 真っ赤になる智奈。

「さあ、二本あるなら、1本は飲めるな。さあ、乾杯だ。」

「ねえ、どういうこと?二本とも飲んじゃったら?」

「それはダメ。理由は内緒。」

「もう、何時もこうなんだから。」

「まあいいわ、今晩は飲み明かしましょ!」

 旨いワインに最高の料理、話は弾み、夜は更ける。

「ところで、智奈さん、明日、特別なクルーズ船がミコノスから出航するんですが、

もしお暇なら、ご一緒に如何ですか?」

「えー、暇は暇なんですが、クルーズってずいぶん高いでしょう?」

「お礼はもう頂いてますよ。」

「え、?」

「先日のディスコのヌード、隅々まで拝ませていただきましたから。」

「あ・・・でもそんな、うーん、」

「それに、階段、見れるかもしれませんよ。」

「え、ほんとですか?」

「ええ、少しは可能性があるでしょう。これで決まりですね。じゃあ、明日の朝、港

でお待ちしています。」

 

 璃紗は出発したときと同じ白のワンピース。私に言われなくても、璃紗はもう下

着は付けない。僅かな胸の突起がブラを付けていないことを私に教えてくれる。下

はパンテイラインも見えないが、かといって、陰りもない。清楚なうなじに青いイヤ

リングが揺れる。

 いつものブランチのあと、チエックアウトの手続きを済ませ、荷物を船まで届ける

ようボーイに託す。

 静かな白い小道を、港の方とは逆に更に登っていく。うねうねと曲がりくねる小

道は途中で細くなり、階段になり、急に視界が広がる。

 「うわー、すごーい。」街の背後の高台からのすばらし眺め。家々は白波のよう、

その向こうの海は青く、青い空との区別がつかないほど。港には無数の漁船。そ

して、見慣れないひときわ大きな白亜の船。

「あれ、何?大きな船。」

「ふふん、乗りたい? あれだよ。」

「うそー、嬉しい!」

「どれぐらい嬉しい?」

「うふふ、これぐらい。」

璃紗は、悪戯っぽく微笑んで、石のベンチの上に登り、ワンピースの肩を外し、白

い胸を露にする。既に硬くなった乳首はツンと空を指している。さらに、ワンピース

をそのままずり下げ、真っ裸になってしまう。午前の柔らな日差しの中で、赤い割

れ目が輝く。

  璃紗は服を着て、二人はゆっくりと石段を下り、小道を辿って港へ向かう。道を

曲がったところでいきなりロバに出くわす。

「うわー、おっきなかわいい目。」璃紗は物静かなロバの背中を優しく撫でる。

 私はロバに積まれた残り僅かな真っ赤なトマトをロバを引く爺さんから買い、何

やら話をつける。トマトを囓りながら、璃紗にも1個渡す。

「おいしい、なんてみずみずしい。」

「ああ、今朝とれたばっかのだかんね」と爺さんが笑う。

「さあ、乗りな。」

「え、これに乗るの?」

「ああ、残りの荷物は港に届けるものらしいからね。」

 私は璃紗の手を支えて、ロバに乗せる。ロバはゆっくりと立ち上がり、璃紗を乗

せて歩き始める。意外に高くなった視野を、ゆうらりとゆれるミコノスの家々の白い

平らな屋根や、様々な形の煙突が静かに通り過ぎていく。

 こうしてロバは古代ギリシアの昔から、人を乗せ、荷を運んできたのだ。璃紗は

一瞬、時を飛び越える。 

 

 

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 智奈はもう港で待っている。智奈の足下になぜかペリカンがやってきてじゃれつ

く。

「さあ、着いたよ。あ、智奈さん待ちましたか?」

「いいえ、今来たとこ。でも、ホントにいいんですか?あとで請求書なんていやです

よ。ところで、これ、何ですか?」

智奈から離れないペリカンを指さす。

「あ、こいつは、ペドロ。昔からここに住んでる。智奈さんは好かれたみたいですね。

で、荷物は?」

「へー、ここの住人ですか。あ、荷物はそれです。璃紗さんの後ろ。あっ、ひっ。」

智奈はペリカンに足をつつかれ悲鳴を上げる。

「もう、あっちへ行ってよ。日焼けで痛いんだから。」

 ペリカンは、別に智奈に言われたからじゃないよ、と言いたげな後ろ姿で、荷揚

げ中の漁船の方へ行く。網からは数匹の小魚がこぼれ落ちている。ペリカンは、

先に来て、小魚をついばんでいた鳩と争い始める。鈍重なペリカンをバカにした鳩

は一歩もその場を譲ろうとはしない。ペリカンは、それでも目の前の魚を口に入れ

る。それに怒った鳩は、飲み込もうとしたペリカンの口の中に首を突っ込み、魚を

奪い返そうとする。鈍いペリカンも、これには激怒し、大きく開く口を更に開いて、

一気に鳩を飲み込む。鳩はペリカンの大きな口元の袋の中でもがく。

 一部始終を見ていた私たちは爆笑する。

 

 

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                                                                                                                                                                                         esupply

 

 目の前には、そびえ立つような巨大な白い壁。それはこれから乗る船の船腹だ。

この大きな白亜の船「ヘルメス」は、エーゲ海をめぐる地中海クルーズ船だが、そ

のチケットの入手法は謎めいている。

 乗船開始。3人は、タラップを登る。三々五々左右の船室に吸い込まれていく乗

客達を横目に、私たちはスチュワードに導かれ、エレベーターに乗り込む。船室は

ペントハウススイート。この船の最上階にある、プライベートデッキ付きの部屋。

 船室に入ると、真ん中に立派なソファーセット。壁にはミコノスの白い家をモチー

フにした水彩画。正面には海の見える大きな窓。その向こうはデッキ。右側はトイ

レとクローゼット。左は寝室。大きなふかふかのキングサイズベッドが二つも。海

側はガラス張りになっていて海が見渡せる。皆でプライベートデッキに出る。出航

の汽笛が鳴る。またまた耳元だ。

 ミコノスの白い家並みが視界一杯に広がる。懐かしい風景が、ゆっくりと小さくな

る。目の前は突き抜けるような青空。どこまでも広がる海。

 

 

 

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