天空の階段   ホテル クロノス

 

 白い家並みを眺める璃紗を、後ろから静かに抱きしめる。

  見渡す限り広がる青いエーゲ海。底抜けに明るい日差し。

  抱きしめていた手を少しずつ上にずりあげる。璃紗の胸の横にたどりついた手は

胸の膨らみを服の上から覆い静かに揉む。

「ああん、」静かな東屋に璃紗の吐息・・・

 私は璃紗の前に立つ。私の手は静かに璃紗の胸に伸び、体を包むワンピース

のボタンを外し始める。

「え、何するの?」

  ボタンがひとつ、またひとつ外されていく。

 まず白い肩が、更に黒いハーフカップのブラに包まれた胸が、そして黒のレース

のパンティが明るい光の下にあらわれる。風の音にまぎれそうな微かな衣擦れの

音と共に、ワンピースは東屋の石畳の上にはらりと落ちる。

 僅かな黒い布だけをまとった裸の璃紗。その黒が白い肌をひときわ引き立てる。

 璃紗を抱きしめキス。お互いの吐息を感じる二人。

 私の手は裸の璃紗の背中を腰を太股を愛撫する。唇は璃紗の首筋を耳たぶを

這う。手がブラの上でとまりブラの上から胸を揉む。指先が縁のレースをなぞる。

その先を覆う薄い布がもどかしい。

 私の手は背中にまわり、ホックを外す。

 璃紗は思わず私の手を押さえる。

「だれも見てないよ。」

「夜魔根ったら。」璃紗は抗議するそぶりはしながらも、顔は笑っている。でもまだ

手で胸をしっかり押さえている。私はその手にキス。璃紗の力は弱くなり、ブラは

静かに引き外されていく。

 胸を隠している璃紗の手、蒼いラビスの指輪が光る璃紗の指先を私はゆっくり

はずしていく。乳房の白い膨らみの全ても、空を向いてぴんと立った乳首も剥き出

しになる。

「あーあ、ついに見せちゃった。」

「綺麗な胸だね。」私は胸の膨らみを直に揉む。静かに静かに。固い先端が手の

ひらに当たる。一方の乳首に軽くキスしながらもう一方の胸をを手のひらで揉み続

ける。時折その指の間に乳首が挟み込まれる。

「ああん、感じちゃうじゃない。」

 そよぐ風が璃紗の裸の胸を優しく撫でていく。空の青が眩しい。

 ここが外であることが、璃紗の体をよけいに熱くさせる。 

 私は唇を胸に寄せ乳首を強く吸う。

 

 立っているのが辛くなった璃紗は、長椅子のクッションの上に横になる。璃紗の

目に映るミコノスの景色もまた横倒しになる。向きが変わって直接目に差し込む

光が眩しい。

 私は璃紗の唇にキス。そして舌は頬、首筋、胸元、乳房、乳輪とゆっくりとはい

回る。乳首は舌先でその先端を転がされ、横をなで回される。生き物のような舌

はおなかからおへそへ更に下腹へと移動する。私はその下の僅かな布に覆われ

た部分を見つめる。黒のレースの間に黒い茂みがのぞいてる。

 私は最後の一枚に手をかける。

 璃紗は、僅かに躊躇した後、微笑みながら僅かに腰を浮かせ、私の手の動きを

助ける。黒いレースに隠されていた黒い茂みがあからさまになる。私の手が茂み

をまさぐる。指先が襞をつまむ。更にその先を優しく撫でる。指先は一番敏感な部

分をそれを包むものの上から羽毛のような優しさで触れる。

「ああん、、ああああん」吐息をもらす璃紗。

 私のもう片方の手が璃紗の太股を開こうとする。璃紗は拒む。エーゲの太陽は

容赦なく璃紗の裸身に降り注ぐ。既に陽に曝されている乳房がちりちりと痛いほ

どだ。覚悟していたとは言え、進んで体を開くにはここはあまりに明るい。白い家々

のあちこちを飾る花々が目に入る。いくつかの小道がここからも見える。そのどれ

にも誰一人通る者はいない。一番暑い時間、この島全体がシェスタ。街は静かに

微睡んでいる。赤いハイビスカスだけが風に揺れている。璃紗は少し安心する。

 私のその手は一旦諦め、乳房を優しく撫でる。唇がまた乳首を吸い転がす。そし

て唇にキス。絡み合う舌。

 私の手が再び太股に降りる。璃紗は今度は拒まない。ゆっくりと足が広げられ

ていく。片足は石畳の上に降ろされる。

 茂みの隅々まで青空の下に開かれ、美しく濡れそぼったヴァギナが明るい光を

浴びて光っている。その中心の敏感な場所は熱く火照って既に剥き出しになり、

白いミコノスのように太陽を反射している。

 私は静かに舌を上下させ、まわし、熱く強く唇で吸う。流れ出る愛液は残らずす

すりあげられる。

「こんな明るいところで・・あ、いや、・・・・」

 璃紗は思わず声をあげる。璃紗も私はヴァギナに舌を這わせる。指先は胸を揉

み、乳首を転がしつまむ。

「ああ、   ああ、  ああ、」激しい私の指の動きに舌の動きに璃紗は反応する。

「ああ、ちょっときつい。やめて。」耐えられなくなった璃紗は懇願する。

 私は愛撫を一段落して、じっと璃紗の瞳をそして体をみつめる。

 明るい太陽の下、璃紗を飾るのはラピスの指輪とイヤリングだけ。全て余さず光

の下に曝された璃紗の体。白い胸の膨らみもぴんと立った乳首もそのまわりを飾

る乳輪も。大きく足を広げられ黒い茂みはおろか、サーモンピンクに輝く裂け目も、

赤く充血している小島まで、全て残さず明るい太陽の日差しの中であらわ。

「綺麗だよ。璃紗。本当に・・・」

 そしてまたキスと熱い抱擁。

 眩しい太陽に照らされ、ラビスの指輪が鋭く光る。

 

 璃紗は何一つ隠すことなくゆっくり立ち上がる。思い切ったように括られていたダ

ークブラウンの髪を解き、私の方を向く。海からの風が髪をはためかせる。

「ねえ、私、私だけこんな格好にさせてずるい。」

 一糸纏わぬ璃紗は、おどけて両手を広げてポーズを取る。底抜けに明るい光の

中で白い肌が眩しい。璃紗の手が今度は私の服を脱がせていく。

 Tシャツを引き上げる。多少は鍛えた胸と腕の筋肉があらわれる。ズボンを脱が

せる。最後の一枚も璃紗が引き下ろす。太い猛りが飛び出してくる。璃紗はそれ

に手を伸ばし、触れる。触れた指がそれを握りしめる。指がゆっくりと上下する。

指先の動きは間もなく激しく、強くなる。今度は私が耐える番。激しく続く璃紗の

刺激。私は手を璃紗のそこに伸ばし、指先で璃紗自身を刺激する。そのことで刺

激に耐えようとする。二人の指先の動きが激しさを増す。私の指は璃紗のなかに

差し入れられる。一本、二本、三本。

 璃紗もまた耐える。絡み合う手と手、舌と舌。互いの指先が互いの秘部を思い

っきりまさぐりあう。

 私は後ろから璃紗を強く強く抱き締める。二人の視界に同じエーゲの海がひろ

がる。その海の向こうにはデロス島が浮かぶ。土塊だけの荒れた島。かつてアテ

ネの金庫として栄え賑わった古代ギリシア文明の遺跡の島。朦朧とする二人の

脳裏にギリシアの繁栄と滅亡が現代の繁栄と滅亡に重なりあう。

「こんな世界だけど・・・・こんな世界だから、璃紗と繋がりたい・・ ひとつになりた

い・・・愛してる。璃紗。」

 璃紗は濡れた瞳で私を見つめる。

 目と目が互いの理性が保たれた最後の会話する。

 唇を寄せる二人。

 静かに二人はひとつになる。

「あ、」璃紗が短く声をあげる。

 しめやかに。

「あ、あ、あ」璃紗の目に映る白い家並みが静かに波をうつ。

 そして深く激しく。

「あ、ああ、、、ああ、ああ、激しい、」エーゲの蒼い海が激しく揺れる。

 波のような快感に耐える二人。

「あ、あ、あ、あ、あ」声をあげる璃紗。

 地中海の風が璃紗の声を飛ばしてしまう。

「あ、。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。」

 ハイビスカスが風にそよぐ。東屋を猫が横切る。

 静かなミコノスのシェスタ。

 静かな時間が二人の間に立ち戻る。二人の瞳は海を眺める。

そしてまた二人で見つめ合い、キス。

 裸の体で抱きあう二人。

 心持ち強くなってきた海風が、火照った裸身に心地よい。

 港を出るクルーズ船の汽笛が鳴る。宝石のような白い家が並ぶ入り江。

その背景の中、印象派の絵のような裸の璃紗。

 

 

 突然私は璃紗を抱き上げ階段を海に向かって駆け下りジャンプする。宙を舞う

璃紗。ばっしゃーんと静寂を破る大きな水音。静寂が破られ踊るプールの青。

「もう、びっくりするじゃない。ああ、でも気持ちいい。」

 冷たい水にからだが引き締まり心地よい。

 水で冷やされ再び固く立った乳首に、私は唇を寄せる。

 再び舌でころがされ刺激される乳首。手に捕まり愛撫される乳房。

「ああ、ひどい。また感じちゃう。もうおしまいだってば。」

 璃紗が水の中を逃げる。私が追う。

 私の目の前で水を蹴る璃紗の白い太股。水中に揺れる璃紗の黒い秘毛。

 白いお尻が水に浮かぶ。

 裸身に水滴だけを纏った体が青い水面(みなも)に踊る。

 あおむけになって浮かび、眩しい光に目を細める璃紗。

 解いた黒髪が水面に広がり、璃紗の表情を扇のように飾る。

「ほんと、気持ちいい。裸で泳ぐって最高!」

 私は浮かんでいる璃紗の横に立ち、璃紗の体を支え顔を引き寄せキス。

 ひと泳ぎした後、二人で東屋に戻る。それに二人分のタオルとバスローブが用

意され、脱ぎ散らした服は皆片づけられている。

「え、どうして?」

「ここはそういうホテル。フロントもない。サインもない。オーダーもない。客が次に

望むものを完璧に用意する。影のようでいて完璧なサービス。ホテルクロノスは、

ミラージュホテルとも呼ばれてる。ミラージュっていうのは幻影って訳すのかな。」

二人は身体を拭き、バスローブを引っかける。

遠いノックの微かな音がして、昼食が運ばれてくる。

 璃紗はテーブルに置かれた赤い飲み物を不思議そうに見つめる。

「これ、トマトジュース?」

「スプレムータ・ディ・アランチョ、英語ではブラッドジュース。地中海シチリア島の

赤オレンジで作ったジュース。おいしいよ。ややこしい名前だけどイタリア語でスプ

レムータはジュース、アランチョはオレンジのこと。イタリアではオレンジシュースっ

て言えばこの赤いのだからこう呼ばれてる。地中海ではありふれたジュースだか

らこのギリシアでも出るんだろうけど、ギリシア語ではなんていうのかな。」

 璃紗はストローに口を付ける。真っ赤な液体が登り、璃紗の赤い唇に吸い込ま

れる。

「うわー、おいしい!」微笑む璃紗。

ギリシア風の大きなサンドウィッチにはたっぷりのサラダと焼きたての羊の薄切り

肉が挟まれている。二人はジュースで喉を潤しサンドをほおばる。様々な香辛料

で香ばしく焼かれた肉がおいしい。

「眠いわ。それにだるい。」

「そりゃ当たり前だろう。昨日は随分飛んできたから・・・・・・。」

璃紗がくすっと笑う。

「お昼も食べたし。昼寝しようか。」

「賛成!」

 二人は部屋に戻る。私は右手の奥の螺旋階段を上がる。最初に入った時は璃

紗は正面ばかり見ていて気付かなかったものだ。階段を上りきると2階の中央に

は大きな天蓋付きベッドが置かれている。ベッドを囲む天蓋には温かな淡い栗色

のカーテン。部屋のまわりの窓も同じ色のカーテンで閉じられている。カーテン越

しの柔らかな光が部屋を満たしている。

 二人はふかふかのベッドに横になる。カーテン越しの柔らかな光が二人を優し

い眠り導く。

 

 

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